暇、ですね  

嵐の前の静けさ -大淀通信室-

 夕食も終わり一息ついた頃、「甲板掃除」のアナウンスが入る。
特別に免除されているものを除き、全員が一斉に掃除を始める。その音を大淀は執務室で報告書を提出しながら聞いていた。

「今日の飯はカレーだったからな。皆腹が重くて掃除も大変だろう」
報告書を読みながら提督は冗談を飛ばす。

 夏季の作戦で大量に投じられた資源も回復して久しく、秋季作戦前1週間には、やることもなくなった提督の仕事は激減していた。そんな緊張感のない提督を見て大淀はふと考える。
――1週間前に全ての準備を終わらせるのは優秀なのか心配性なのかわかりませんね。
「今日も特に問題はないな。平和な1日だった……」
「はい。これで今日の報告は以上です。……それでは巡検に行ってまいります」
「お~う」

 時刻はフタマルマルマル。日課である巡検へと出発する。本来は当直士官による見回りを指す言葉である。艦隊発足時は実施されていなかったが大淀が復活させた。とは言っても厳格な見回りではなく散歩のようなものだ。提督はそんな大淀を見て『真面目すぎる』と笑ったものだが、律儀に巡検ラッパを流してくれる辺り彼もまた真面目である。

 まずは各艦種の艦娘寮へと足を進めた。いつ来ても駆逐寮は騒がしい。皆翌日の上陸でどこへ行こうかと気が逸っているようだ。浴場の掃除が不十分なことを注意し次へ向かう。軽巡寮、重巡寮と大型艦になるにつれて雰囲気は落ち着いていく。

 印象的なのは空母寮だった。正規空母と軽空母の2つの棟で分けられた寮はどちらもまばらな艦娘しか残っていなかった。一・二航戦は夜間の訓練へと弓道場へ赴いている。軽空母の一部の面々はとっくに居酒屋「鳳翔」へと飲みに出かけていた。意外なことに葛城も弓道場へと付いていっているようだ。ここ数日提督から「特に良」の評価を貰ったことが嬉しいらしい。

 工廠では明石と夕張が個別に作業をしていた。明石はクレーンや工具類を念入りに手入れしている。作戦が始まれば連日夜勤へとシフトする彼女の勤務体系は事前準備が大切だ。一方夕張は怪しげな設計図を書いている。

「……これ、なんですか?」
「聞きたい? 今度の作戦じゃ駆逐艦の輸送作戦が主体じゃない。ドラム缶積んでいくこともあるだろうけど、それじゃ心許ないと思って火器を搭載してみたの!」
 確かにドラム缶に12.7cm単装砲が取り付けられている。
「でもこれじゃ狙いがつけられないんじゃ? しかも重そうです」
「その辺はこれで解決ね。ドラム缶全周に小型の噴式推進器、それと有線誘導用の光ファイバーケーブル。これで対多数の戦闘も対応可能よ」
――12.7cm単装ドラム缶によるオールレンジ攻撃!?
「が、頑張ってください」
「出来たら4セット搭載して5-4に行ってみるわね!」
――修復剤だけは手配しておきましょう……。

 工廠を後にして向かうのは正門、守衛所。今日の警備は7駆が担当していた。やや退屈そうな曙に挨拶をして異常がないかを確認する。曙は大きめのボディアーマーに89式5.56mm小銃を装備している。艦娘に小銃弾は効果がないのでボディアーマーは必要ないのだが、その方が『らしい』そうだ。見た目も抑止力の一環ということで採用されている。
――確かにセーラー服の少女では警備としては頼りないかもしれませんが。
ちなみに今日の警衛班長の長良は走りこみをしていた。

 道場の明かりが点いているのが見え、覗いてみると長門と日向が筋トレをしていた。
「お疲れ様です」
「ん……大淀か。巡検とは大変だな」
「好きでやっていることですから。凄い汗ですがずっとやっていらしたのですか?」
「作戦まであと少し、どうにも疼いてしまってな」
 長門型戦艦は最近再評価がなされている。一説においては大和型よりも優秀とする提督もいるらしい。この艦隊でも夏季作戦での活躍により長門型の出撃優先度は上昇している。それも彼女が奮起する一因だろう。

「私にも出番があるといいのだが……」
 火力に劣る伊勢型戦艦の彼女は水上戦での殴り合いでは出撃優先度は低く設定されている。反面ここ一年以上対潜艦のスペシャリストとして成長した彼女は今回も潜水艦との対峙を望んでいた。
「その時はぜひご一緒させてください」
「今ならカ号と瑞雲で大淀にも負けないぞ」
 同じサブマリンハンターとしてライバル同士の2人であった。

 時間をかけて巡検を終えた大淀は幕僚本部へと戻った。
――いつもと同じように見えてもやっぱり作戦前ですね。最後の上陸、精神統一、準備……あと少しで実戦か。

作戦発動まで後5日。思い思いの時間は足早に過ぎ去っていく――



暇なのです

何回も言いますが、暇なのです。公式ツイッターもあまり動きはないので更新用のネタがなくなってしまいました。そこで逆転の発想。暇ならばそんなとき艦娘は何をしているのかと思い、大淀さんに散歩をしてもらいました。

以前垂れ流した妄想をベースに更に追加した設定たち。甲板掃除や巡検は海自でも行われているものです。毎日行われる巡検は結構面倒だったり。それをやらせるのは可哀想なので散歩レベルにしてみました。

甲板掃除は甲板の名前をしていても別に船を掃除するわけではありません。陸上施設でも船を想定して床は甲板である、という設定で行われる掃除。全員でやるので人数は多いですが、広い寮なので結構大変。巡検でのチェックも厳しく何度もやり直しを命じられたものです。

そんな懐かしい単語を入れてみたら思いの外文量が膨らんでしまいました。本当はもっと細かく書きたいですが小説サイトでもありませんしここらが限界でしょう。

それにしてもオールレンジ攻撃可能なインコムのような動きをするドラム缶、欲しいですね。無線誘導でドラム缶(NT専用)とかでも。艦娘にニュータイプがいるのかはわかりませんが。


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category: 雑記

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コメント

いつも以上に設定やキャラが盛り込まれていますね!
鶴さんは知識も豊富ですし、世界観がしっかりしているように思います。
そのためか、とても安心して読めますね(何だか上から目線になっちゃったかもです。すみません)

夕張さん、もし使えそうならうちにもその装備をください。
せめて設計図だけでもこちらに流してください……。

暇なのは非常に同意致します。
やることがないわけではないのですが……例えば駆逐艦のレベリングとか装備の改修とかやろうと思えばいろいろあります。
しかし、もう今すぐにでもイベントが始まってもいいくらいの気持ちですね。
こんな状態がまだ数日も続くのかー。

ひなた #- | URL
2015/11/13 23:56 | edit

Re: タイトルなし

>ひなたさん

そういえば今回初登場の娘が多かったですね。夕張・長門・日向がセリフ付きか。
安心して読めると言っていただけるとこちらも書いていて安心です。どんなコメントでもいただけるとありがたいですね。

サイコミュ兵器と化したドラム缶はきっと爆発オチくらいにしかならないでしょうw
夕張さんが暴走しているのでいい結果にはならないはずです。

やることはあるにはあるんですよね。まだウィークリーも終わっていないし駆逐たちはまだまだいるし。でもそろそろ変化が欲しい頃。イベントー!はやくきてくれー!

鶴 #- | URL
2015/11/14 01:16 | edit

暇と言えるその余裕がさすがです。
ベテラン提督さんたちは、今から腕が鳴るって人が多いようですね。

ドラム缶に単装砲装備してオールレンジ攻撃?
いいな、それ。初春に装備させたいなぁ

ちっぴー #- | URL
2015/11/14 02:12 | edit

Re: タイトルなし

>ちっぴーさん

艦これは資源以外は戦力低下の起こりにくいインフレする世界ですから長く続けるだけで有利ですね。

攻撃用ドラム缶が実装されたらぜひ夜戦でのカットインはニュータイプ的なひらめきとSEに変えて欲しいです。

鶴 #- | URL
2015/11/14 13:54 | edit

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